こんにちは。弁理士のまるです。この記事はパテントサロンさんの「知財系ライトニングトーク #16 拡張オンライン版 2022 春」に投稿させていただいた記事です。
突然ですが、みなさんは「日本が誇れるものってなに?」と聞かれると、何を思い浮かべますか?
私が真っ先に思い浮ぶのは、「トイレ」です…!最近では、お店や駅のトイレがキレイ・高機能であることは当たり前になってますよね。
今日は、「トイレ」で有名なTOTOの「ウォシュレット®」の知財について、特許を中心にご紹介します。
目次
ウォシュレット®はTOTOの登録商標
温水洗浄便座のことを「ウォシュレット」と呼ぶ人が多いですが、「ウォシュレット」はTOTOの登録商標です。
ウォシュレット®開発の歴史
ウォシュレット開発の歴史を調べていたら、こんな記事を見つけました。
開発話がとても面白かったので、漫画にまとめてみました。
イラストはイメージです。今回は人ではなくうさぎでお送りします♪
「紙で拭くだけで充分」と思っていた消費者の概念を変えて、次々と技術を生み出していったTOTOのウォシュレット®。
現在の製品には、たくさんの技術が詰まっています!
さあ、特許を見ていきましょう。
技術1:少ない水量でパワフルにおしりを洗う「ワンダーウェーブ洗浄」
おしり洗浄では、少ない水量でパワフルな洗浄力が求められています。
そこで開発されたのが「ワンダーウェーブ洗浄」。
流速の遅い水と速い水を交互に連射して大きな水玉をつくり、おしりに着水させる技術です。
特許はこちら(特許第3264274号)。
この技術では、電磁コイルの励磁制御を通して、洗浄ノズルからの吐水を制御します。
具体的には、電磁コイルを繰り返し励磁させることにより、プランジャを周期的に往復動させます。これにより、吐水される前の洗浄水に脈動(圧力が上下変動する状態)を発生させます。
この脈動流が洗浄ノズルから噴出されると、以下の図のように、ちぎれたような水玉が出てくるのです。
以下の図に示すように、水玉(Wp1~Wp5)は、周期的に水量が変わります。そして水量が大きい水玉ほど、吐出後の流速Vが速くなります。
流速Vが速い大きめの水玉が、前方の小さめの水玉に追いついて…合体!
もっと大きな水玉のできあがりです。
大きな水玉は、おしりに当たるときの衝突エネルギーが大きいため、しっかり洗浄してくれます。このように、ときどき大きな水玉をおしりに当てることで、少ない水量でもパワフルにおしりを洗うことができます。
なるほどね~!
ちなみに「ときどき大きな水玉をあてる」の「ときどき」にも工夫がされています。
「大きな水玉あたる間隔」が長い間隔だと、人間は振動を知覚して不快感を感じるらしいのです。しかし「大きな水玉あたる間隔」が短い間隔だと(繰り返し周波数が約5Hz以上)、人間は振動を知覚できず、不快感が減少するようです。
おしりのこと、トコトン考えていますね。明細書からも、その熱意が伝わってきました!
技術2:たっぷり感と快適な洗い心地の「エアーインワンダーウェーブ洗浄」
「エアーインワンダーウェーブ洗浄」は、「ワンダーウェーブ洗浄」の進化系です。
水玉に空気を含ませて、水玉を大きくする技術です。たっぷり感と、快適な洗い心地が特徴です。
特許はこちら(特許第6210435号)。
下図は、洗浄ノズルの噴出口近傍の断面図です。
噴出口の上方に、水を一時的に貯留する空間が設けられています。また噴出口の近傍には空気を導入する空気導入口が設けられています。
まず水を噴射して一時的に空間に水を貯留させます(①)。そして後から空気を巻き込んだ水を空間に噴出させます(②)。これにより気泡を含んだ状態を保った大きな水玉をつくれるようです。
ちなみに「ワンダーウェーブ」、「エアーインワンダーウェーブ」は、ともに商標登録もされています。さすがです。
前編まとめ
前編では、「ウォシュレット®の開発話」と2つの「おしり洗浄技術」についてご紹介しました。いかがでしたでしょうか。
後編では、「便器をキレイに保つ技術」について紹介したいと思います。お時間あれば後編もご覧ください。
ウォシュレット®の知財(後編)