知っておくべき「補正」(1)

さて、今回から「補正」について説明します。
補正ができるタイミングと範囲は決まっています。
「最初」の拒絶理由通知と「最後」の拒絶理由通知は、5つの法則を押さえると◎です!

今日は、第1回として、イントロです。

はじめに

「補正」って、もしかしたら、特許にあまり絡まない人ほど、「良いことじゃん。後から修正できるんでしょ?」と、単にポジティブに捉えているかもしれません。逆に、弁理士試験の勉強をしている人にとっては、「受験の最重要項目の一つだから、細かいところまで覚えなければいけないし、ややこしくて、大嫌い!」かもしれません。かく言う私もそうでした・・・
補正できる時期が決まっていたり、その時期によっても、補正できる範囲や内容が決まっていたり、何しろ、やたら細かく規定されているので、覚えるのが大変でした。まあ、今となってしまえば、どうってことないんですが。

この塾は、特許法の内容を「網羅」することは目的としておらず、誰もが分かり難いと思う部分を、「痒い所に手が届く」ように、「私なりの切り口」や、「なるべく誰も使っていないような、分かり易い例」を使いながら説明したいと思っています。なので、網羅したいと思っている人は、条文を熟読し、青本 & 審査基準 & ちゃんとした解説書、などを読んで下さいね。逆に言うと、誰がやっても同じような解説になってしまうような項目に関しては、バッサリ割愛します!笑

 今回説明する「補正」も、細かく見ていくと膨大な量があるので、なるべくポイントだけを分かり易く説明できたらいいなと思っています。

ただ、そうは言っても、「弁理士受験生にとっては、あまりに常識なので割愛したいけど、研究開発者にとっては、やはり改めて説明しておきたい」というようなことも多く、ちょっと悩ましいところも多々あります。

「補正」はなんのためにやる?

「補正」って、一言でいうと、
先願主義だから、誰もがいち早く出願したいと思うのは当然だよね。でも、出願人が焦って急げば急ぐほど、不備もあって、「後から手直し」したいことも、色々と出て来るのは仕方ないよね・・・だから、そうなったときの救済策は一応、特許庁として用意しておきます。でも、いくらでも自由に手直しできてしまうとなると、出願人にとっては有り難いけど、逆に、審査官や第三者にとっては、「最初の出願は何だったんだ?原型を留めていないじゃないか!ふざけるな!」という、不公平極まりないことになり兼ねないので、補正できるタイミングと範囲・内容は明確に定めておきますよ、 ということです。(一言でおさまらなかった笑)

じゃあ、何で「手直ししたいの?」っていうと、「拒絶査定になりたくないから」ですよね。一方で、「自分の発明を、一つのまとまった形にしたいから手直ししたい」とかになると、これはもう「補正」というレベルではなく、優先権主張などの世界ですから。(優先権主張も超重要項目なので、後日ご説明します。お楽しみに!)

特許の出願が、権利化が目的だとすると、拒絶理由通知(以後、拒理通と呼ぶことにします)を、1度ももらわずに登録されるのがベストです。でも、最近の出願で、1度も拒理通をもらわずに登録されるパターンって、あまり無い気がします。先ほど述べたように、「なるべく早く出願したい」ので、「初めから、欠点の無い完璧な出願」をするのは難しいからです。
 拒理通が来ると、反論(意見書)だけで済む場合はあまりなく、何らかの手直し(=補正)をする必要に迫られたので仕方なく補正をして、何とか登録に持ち込む、という場合が大多数です。要するに補正って、「拒絶理由を解消」するためにやるんですよね。

なお、補正によって、当初の明細書に書いてあること以上に権利範囲を広くすることはできません。「明細書」に書いてる範囲内なら、「特許請求の範囲」を広げることができる場合はありますが。ただ、現実には、狭くすることで登録に持ち込む、という場合がほとんどです。何しろ特許って、「権利化する範囲が狭ければ狭いほど、権利化し易い」というのは事実です。ただ、狭ければ狭いほど、「独占的排他権を得る」というビジネスとしての意味・価値は無くなっていきますが・・・
だから、皆さん、「なるべく広く権利化を」と考えるんですよね。そして、そうなるようにお手伝いするのが、弁理士としての一番重要な任務かと思います。

「最初の拒絶理由通知」と「最後の拒絶理由通知」

補正できる時期と内容については、研究開発者の方は、多分、知財部の人が「いついつまでに、こういう観点で、修正したいことが、有るか/無いかチェックしてくれ」等と指示してくれると思いますので、その通りに対応すれば、自分で覚えていなくても、特に気にしなくても実害は無いと思います。

そうは言っても、補正には欠かせない「例のアレ」は説明しておいた方が良いでしょうね。
そう、「最初の拒理通」と「最後の拒理通」です。

法則性を覚えてしまえば、すっごく簡単です。具体例と併せて、分かり易くまとめますので、以下の5つの法則は、是非、覚えて下さい。これだけで、すべてです! もちろん、弁理士試験も、これだけで大丈夫です。

【法則1】拒絶理由は限定されている

特許法49条というところに、拒絶理由となる違反が「すべて」列挙されています。「例えばこんな違反はダメ」という例示列挙ではなく、「拒絶査定となる違反は、ここに載っているものだけがすべてです」という限定列挙です。繰り返しますが、これ以外の理由で拒絶査定になることは、絶対にありません

【法則2】審査請求をして、初めて送られてくる拒理通は、絶対に「最初の」拒理通

初めから「最後の」拒理通が来ることは、絶対にありません。拒絶の理由としては、例えば「新規性違反」とか「進歩性違反」などが多いですね。いずれにしても、特許法49条で規定されている拒絶理由の中の、1つ、あるいは2つ以上のどれかに該当しますが、その拒絶理由が特許法49条以外の理由であることは、100%ありません。

ちなみに、「最初の」拒理通の表紙には、「最初の」とは書かれていません。書いてあるのは単に、シンプルに「拒絶理由通知」です。一方、「最後の」拒理通は、表紙の上の方に「最後」と、目立つように書かれています(下図(1))。また拒絶理由通知の末尾にも、「最後ですよ~」と書いてあります(下図の(2))。実際には、「最後の」拒理通が来ても、最後でないこともあるのですが、「これが最後のチャンスだからな! 心して対応しろよ!」という、特許庁の親心かも知れません。まあ、「親心」というよりも、「最後の」拒理通は、応答できる補正が、「最初の」拒理通の補正と比べて、凄まじく限定されるので、「くれぐれも、対応を間違えるなよ! しくじると、拒絶査定へまっしぐらだからな!」という、特許庁からの警告、だと思った方が良いでしょうね。

【法則3】「最初の」拒理通は、何回も来る可能性がある

「最初の」拒理通は、何回も来る可能性があります。ただし、2回目以降の「最初の」拒理通は、「拒絶理由が元々存在していたが、審査官が見落としていて、後で気が付いて通知してくる場合」です。最大のポイントは、「元々存在していたのに、審査官が見落としていた」です。

例えば、新規性違反で「最初の」拒理通が来て、出願者の補正によって新規性違反は解消したが、実はそれ以外に、元々、記載が不明確であるという明確性違反で特許にできないことを、「審査官が見落とし」ていて、「明確性違反に対する拒理通を、改めて送ってきた場合」は、「最初の」拒理通となります。

あと、拒理通に「最後」と書いてなければ、どんな場合でも、すべて「最初」の拒理通です! 従って、「最初」の拒理通の「緩い」対応でOKです! もちろん前述した通り、その拒絶理由を解消しないと、拒絶査定まっしぐら、ですからご注意を!

【法則4】「最後の」拒理通は、拒理通の対応で補正をしてその拒絶理由は『解消された』が、「その補正によって新たに生まれてしまった」拒絶理由を通知してくる場合で、「かつ」、その拒絶理由「以外には拒絶理由がない」場合

ちょっと分かり難いですが、具体例を示せば明確です。例えば、「新規性違反」という拒理通が来て、それを補正したら「新規性違反」は解消できたが、今度は「進歩性違反」に該当してしまった場合であり、「かつ」、その「進歩性違反」以外には、拒絶理由が存在しない場合、は「最後の」拒理通が来ます。

「補正により新たな拒絶理由が生じた」、かつ、「それ以外に拒絶理由は存在しない」が、「最後の」が来る要件です。

では次に、似たような事案でも、「最後の」が来ない場合の例を示します。
「新規性違反」という拒理通が来て、それを補正したら、「新規性違反」は解消できたが、今度は「進歩性違反」に該当してしまった場合であり、「かつ」、それ以外にも元から存在していた「明確性違反」を見落としており、「進歩性違反」と「明確性違反」の「両方」を通知する場合は、「最初の」拒理通になります。

新たに生まれた拒絶理由(進歩性違反)「だけ」の通知ではない(明確性違反もある)ので、「最初の」拒理通となります。 

【法則5】「最初」「最後」に関わらず、その拒絶理由に応答して解消できる機会は「1回だけ」

1回でその拒絶理由を解消できなければ、「最初」であっても「最後」であっても、拒絶査定となりますよ!

例えば、新規性違反で拒理通が来て、その応答期間に補正をして、その「新規性違反」が解消しなければ、仮に、その補正によって、新たに進歩性違反も生まれたとしても、あるいは、見落としていた明確性違反が見つかったとしても、新規性違反で「拒絶査定」になり、「最初」や「最後」の拒理通は、もう来ません。

要するに、2回目の「最初」の拒理通とか、「最後」の拒理通が送られて来るのは、「その拒絶理由は解消できた」が、「それ以外に拒絶理由がある場合/新たにできた場合」なので、何しろ、特許庁から来た拒理通は、「その応答期間に解消」しなければ「拒絶査定が確定」と思っていて下さい。

まとめ

補正ができるタイミングと範囲は決まっている
「最初」の拒絶理由通知と「最後」の拒絶理由通知は、5つの法則で理解する

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