地方に特許事務所を開業した話(1)

和歌山にきのか特許事務所を開業しました

お久しぶりです。弁理士のまるです。

突然ですが、7月末に特許事務所を退職し、8月1日に和歌山で特許事務所を開業しました

事務所名は「きのか特許事務所」です。
和歌山県に流れる「紀の川」に因んで、そして知財支援によりお客さまのビジネスが実(=果)を結ぶように、との願いを込めて名付けました。

ホームページ内のブログで「マンガでわかる知的財産権」を始めました。
これからどんどんコンテンツを増やしていく予定です。良かったら見てみてください!

開業から1か月経過しましたので、つれづれなるままに開業前後を振り返ってみようと思います。今回は開業前の話です。

独立開業の経緯

独立開業を意識し始めたのは今年4月ごろ。

これまで黙々とリモートワークを続けていたのですが、黙々と業務をやる中で、だんだんと新しいことへの興味が湧いてきました。

ちょうど2人目を諦めた事情があり、どうせなら、子どもが2人いたら自分は選んでいなかったような大胆な生き方をしたいと思い始めました。

それが独立開業でした。

それまでは「独立開業は興味あるけど、そんなリスクの高いことはできない!」と思っていたのです。

でもよく考えてみると、士業は他業種よりも、開業するリスクが低いのではないかと。
基本的にパソコンと通信環境があればできてしまうため、設備投資がほぼ必要ない。仕入れいらずで、在庫をかかえなくてよい。万が一ダメだったとしても、経験は残る。資格と経験を武器に、どこかの特許事務所に雇ってもらえる可能性も高い。

不安がなかったといえば噓になります。でもやってみないと分からないことはたくさんある。

興味のほうが勝り、開業しようと決意しました!

場所の選定

拠点をどこにするか?

一番最初に考えたのは、「拠点」をどこにするかでした。拠点によってターゲット層や競合が変わり、これらによって、コンセプトや営業戦略が変わってくるからです。

自分が住んでいるところは大阪と和歌山の県境なので、和歌山にするか大阪にするか悩みました。

先輩弁理士に相談したところ、絶対和歌山だと。

確かに大阪には企業がたくさんあってお客さんが多いかもしれないが、大阪には特許事務所が山ほどある。彼らとの競争になるのは、分が悪い。

結局、特許事務所の数が少ない和歌山にしました。

(とはいっても、和歌山の既存の特許事務所と競争する気はありません。特許出願や商標登録出願の経験がない経営者に、知財アクションをとってもらえるような仕掛けを考えています。)

オフィスはどうするか?

士業はパソコンとネット環境があればできる、という仕事が多いです。

なので開業場所としては、以下が挙げられます。

  1. 自宅
  2. バーチャルオフィス+自宅
  3. 共用のコワーキングスペース
  4. 個室があるレンタルオフィス
  5. 賃貸オフィス

④と⑤の違いは、業務に必要な環境がはじめから整っているかどうか。⑤は、デスク、チェア、キャビネット、プリンタ、通信環境などを、すべて自分で用意する必要があります。

自宅の住所が公開されることは避けたかったので、①自宅はなし。

打合せスペースが欲しかったのと、引きこもりになりたくなかったため、②バーチャルオフィス+自宅もなし。

軌道に乗るまでは固定費を抑えたいので、⑤賃貸オフィスもなし。

③コワーキングスペースと④レンタルオフィスで考えました。和歌山のレンタルオフィスはどこもいっぱいだったのと、最初は外回りが多いだろうと考え、料金の安い③コワーキングスペースにしました。

特許庁に申請する住所をコワーキングスペースにしたかったので、住所登録(登記ではない)ができて、かつ郵便を受けられるコワーキングスペースを探していました。

創業セミナーでたまたま知り合った方の紹介で、雰囲気の良いコワーキングスペース「cotowa」に巡り合えました。
月額11,000円と良心的。今のところ、ここにしてよかったです。

普段利用している人数はそこまで多くないですが、毎日誰かが立ち寄っています。
今のところ、行くたびに経営者に出会い、名刺交換をしています。

リスクが少ないといっても、やはり1人でいるとふと不安が押し寄せることがあります。しかしコワーキングスペースに行って誰かとしゃべることで、精神状態をまずまず良好に保つことができています。

個人事業主にするか法人にするか

特許事務所は、2つの形態があります。

「個人事業主」が経営する個人事務所か、「法人」の形態をとる弁理士法人かです。

今年4月から、弁理士1人の事務所でも、弁理士法人を設立することができるようになりました。

法人だと、社会的な信用力が高まるとか、事業拡大しやすいとか、税務上・社会保険制度上の優遇措置があるとか、いろいろメリットはあるらしいです。(代表社員も給与所得控除が適用される・年度末に至るまで源泉税相当額の資金が活用できる・事業税の負担が少なくなる、所得が多くなると法人税率のほうが個人に比べて低くなる…)

一方で、弁理士会への会費負担が増えますし(個人の会費+10,000円/月)、確定申告が複雑になるので税理士に依頼する必要が出てくるかもしれません。

事業が軌道にのって、ある程度の売上が出ていないと法人にするメリットは少ないと考え、まずは個人事業主として小さく始めることにしました。

社会保険をどうするか

いままで勤務先の社会保険に加入しており、社会保険のことなど気にしたこともなかったのですが、会社を辞めると、自分で決めなければいけません。

正確なことは分からないので、ここでは参考程度にとどめておいてください。

年金保険

個人事業主なので、「国民年金(第1号)」に加入しました。元勤務先から離職票が届いたら、近くの年金事務所に行き、厚生年金から国民年金に切り替える手続きをしました。

保険料は16,590円/月です(令和4年現在)。

健康保険

健康保険については、複数の選択肢があります。

  1. 配偶者の扶養に入る(ただし年間収入130万円未満の場合)
  2. 元勤務先で加入していた健康保険を任意継続する(2年間という期限付き)
  3. 国民健康保険に加入する

①だと支払わなくてよくなります。②は、任意継続といえども会社負担分がなくなるので、負担額は今までの2倍になります。③は、前年の所得に応じて保険料が決定します。

開業初年度で支払う額としては、③>②>>①だったですが、諸事情あり、結局②を選択しました。

失業手当をもらうか

自己都合退職の場合でも、所定条件を満たせば失業手当をもらうことができます。日給の50%~80%を3~5か月もらえるようです(参考)。

しかし開業届を出して自営業を始めた(準備を含む)場合は、失業手当はもらえません。

私も少し検討しましたが、「芽がでるまでに時間がかかるから早めに種まき活動を始めたほうがよい」との助言をいただいたので、失業手当をもらうのは辞めました。

まとめ

開業前をざっと振り返りました。

開業時にはこまごまと考える項目が多く、まだまだ残しておきたいことはありますが、ひとまずこんなもんで。

気が進めば、また続きを書きます!

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