新規性について、もう少し説明します。
「新規性と進歩性」って、良く一緒に扱われて、「どちらも難しそうだな」と思われているかも知れません。しかし、「進歩性」と「新規性」とは、実は全くの別物で、その判断の難しさは、月とスッポンです!
今日は、判断が易しい方の「スッポン」の「新規性」を説明します。
本当に、すごく簡単なんですよね。
例えば、出願しようとしている自分の発明が、「A+B+C」としましょう。
そして、先行技術(公知例)として、「A+B+D」、と、「A+B」が存在するとします。
どちらも特許調査で「関係ありそう」なものとして「引っ掛かった」ものです。
さあ、自分の発明は、新規性ありますか? 判定結果は???
結論は…明確に新規性はあるんです!
いずれの公知例にも自分の発明のすべてが開示されてはいない場合、新規性は「ある」のです!
新規性では拒絶されません。
目次
新規性ありの例
- A+B+C ≠ A+B+D
ちなみに、重なり合う部分は、「A+B+C+D」の発明です。2つの発明がこのように部分的に重なっていても、それ自体は、新規性の有無に影響しません。
ただし、特許をとれたとしても、重なり合う部分を実施すると他人の特許を侵害してしまう可能性があります。特許要件と侵害の認定要件は異なるので、注意が必要です。そのあたりは、後日追々説明しますね。
- A+B+C ⊂ A+B
ちなみに上のケースは、自分の発明(A+B+C)の範囲が公知例(A+B)の範囲に包含されているため、新規性なしと思われるかもしれません。
しかし、公知例に要素Cについて言及がなければ、公知例によって自分の発明(A+B+C)が開示されていることにはなりません。
この辺りは、直感と異なり、少しややこしいですね。
ちなみにこのケースでも、特許をとれたとしても自分の発明を実施すると他人の特許を侵害してしまう可能性があります。
新規性なしの例
反対に、公知例によって自分の発明(A+B+C)が開示されている場合、新規性なしとなります。
- A+B+C = A+B+C
これは、自分の発明と公知例とが「イコール」の場合です。
- A+B+C ⊃ A+B+C+D
この場合、公知例(A+B+C+D)に自分の発明(A+B+C)の要素A、要素B、及び要素Cがすべて開示されていますので、新規性なしとなります。
要は、「自分の発明 ⊇ 公知例」とならなければ新規性あり・・・なのですが、式にするとわかりにくいので、図で覚えると良いと思います。
比較すべき先行技術が決まっているなら、図に当てはめるだけなので、新規性があるかどうかで迷うことはありません。
コメント
実務では、関連しそうな先行技術を見付けるの(先行技術調査や公知例調査と言います)が、大変なんですけどね。
でも、安心して下さい! 「完璧な公知例調査」なんて、ちゃんと出来ている出願は、ほとんどありません。
だって、世界のどこかで同じ発明が公開されていたら「アウト!」ですが、全世界なんて調査できないですもんね!
「英語文献」だけだとしても、調査はハードルが高く、「え~~!」ってなりますよね・・・
だって、日本人は、英語が苦手なことが多いですから・・・
ですから、国内だけでも公知例調査していたら、ひとまず「公知例調査済み」としちゃって良いのではと思います。
ただし、「進歩性」の判断は、そうは行きません。プロでも悩むところです。
実際、拒絶理由として一番多いのも、「進歩性」です。
もしかしたら、特許の分野で、最も判断が難しいのが「進歩性」かも・・・
進歩性の詳細については、また次回以降、ご紹介しますね。では。
こちらもご覧ください。
新規性と進歩性(1) ~入門編~