目次
はじめに
この記事は、「弁理士の日記念ブログ企画2025」の参加記事です。今年は「生成AIと知財業界」というテーマです。
生成AIの急速な普及により、あらゆる業界が変革の波を迎えています。知的財産業界、特に特許事務所もその例外ではありません。ChatGPTやその他の生成AIツールが日常的に使われるようになった今、私たちは業界の未来について真剣に考える必要があります。
生成AIが変える知財業界の風景 - 従来業務の価値変化
生成AIの登場により、知財業界の従来業務には大きな変化が予想されます。
一般的な知財法律相談、定型的な代書業務、淡々とした成果物の提供…これらは価値が減少すると思われます。基本的な質問への回答はAIでまず質問し、複雑な部分のみ専門家に相談するようになるでしょう。明細書の初稿作成や基本的な書類作成は自動化が進んでいくと思われます。また、差別化要素のない画一的なサービスは、人にやらせるよりも機械にやらせた方が早くて正確です。
これらの業務は、生成AIが得意とする領域と重複するため、従来通りのやり方では競争力を失うリスクがあります。
新たな価値創造の模索
では、どのようなサービスが価値あるものとして残るのでしょうか。いくつかの可能性を考えてみましょう。
責任の所在としての価値
最終的に意思決定はクライアントであるものの、意思決定を後押しする見解を提示する責任としての役割は、AIには代替できません。人間がいるからこそ、クライアントに安心感を提供できます。
柔軟性と人間性
雇用情勢が不安定な中、必要に応じて調整可能な外部パートナーとしての役割や、AIにはない人間らしい対応力は重要な差別化要素となり得ます。
ブランド力の構築
技術的な差が縮まる中、信頼性やブランド力が購買決定の重要な要因となる可能性があります。
揺るぎないミッションを軸とした変化
予測困難な時代において、一つ確実に言えることがあります。それは、変化を恐れず適応し続けることの重要性です。
従来の日本企業では、一度決めた方針を守り抜く「意思のぶれなさ」が美徳とされてきました。しかし、急速に変化する環境では、自分も変化していくことが生存の鍵となると考えます。変化に対応しながらも、ここだけはブレないという軸を持って変化していくことが重要だと考えています。
企業では、ミッション・ビジョン・バリューなんて言葉をよく聞きます。
ミッション・ビジョン・バリューとは
- ミッション:普遍的な存在意義
- ビジョン:ミッションを果たすための中長期の目標
- バリュー:ミッション・ビジョン実現のための行動指針
よく例えられるのは、桃太郎の例です。桃太郎のミッションは「鬼退治」ではありません。
- ミッション:村のみんなの楽しい暮らしを守ること
- ビジョン:鬼を退治すること
- バリュー:どんな時もくじけない、仲間の個性を尊重する、チームプレーを重視する
ここで、ミッションを果たすためには、ビジョンやバリューは変えてもいいとされています。
経営者や自営業の人なら自己の事業の、雇用されている方は個人のミッションを明確にする。ミッションが明確であれば、その実現に向けて当面の目標ややり方を自由に変えてもいいのです。
環境の変化に応じてピボットしながらも、根本的な存在意義は保持する。
このスタンスが、この時代で生き残っていく鍵になるのではないかと考えます。
ミッションは胡散臭い?
私は、この春に、事務所の、そして自分のミッションを考えました。しかし考えるにあたって、どうしてもしっくりこないことがありました。
ミッションは、自分が本当に貫きたいこと。一方で、確かに社会や顧客に貢献したいとは思っているけれど、自分と家族の生活の確保のために仕事をしていて、それが最重要課題。そんなことは顧客にとって関係のない話なので顧客視点でミッションを考えようとすると、なんだか胡散臭く思えて嘘をついているような申し訳ない感覚になってしまう…。
そこの乖離を埋めるのにどう考えたらよいか…というところに悩みました。
どうにか自分を納得させるために「ミッションを実現することで自分・家族の生活も確保できる、そんなミッション」を考えることにしました。企業だって、営利団体である以上は利益や売上を追求する、そして従業員の生活を守ることは外せないはずですし、このように考えるのが自然なのかなと思います。
私のミッション
弊所のミッションは「知のチカラで、一歩前へ。」です。
専門知識と経験を活かし、”痒いところに手が届く”サポートを通じて、クライアントの「できなかった」を「できる」へと変えるお手伝いをすること。これが私(たち)の不変の存在意義、ということにしました。
生成AIが今以上に普及して、業界構造がガラッと変わっても、このミッションを変わらず掲げていきたいと思っています。今は、最も専門性を活かせる知財のサポートを行っていますが、知財にこだわるつもりはありません。
こんなことを言って、数か月後にミッション自体を変えているかもしれませんが…そのときは温かい目で見守ってください笑
まとめ – 変化を機会として捉える
生成AIの登場は、知財業界にとって脅威でもあり機会でもあります。数年後にどんな業界になっているのか…おそらく誰も分かりません。
不変のミッションを軸に、柔軟に戦略を調整し続ける。そんな姿勢こそが、変化の激しい時代を乗り切る鍵になると信じたいです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。